ブスの悲哀をかみしめる
これまでずっと、アレルギーの治療薬として知られる、ステロイドの薬害について警告を発してきた私が、昨秋、甲状腺の病気「亜急性甲状腺炎」になり、ステロイド治療を受けました。
クスリを投与されて、症状はすぐに改善しましたが、服用から2カ月ほどたって恐怖のムーンファイスになりました。医師に予告され、ある程度予測はしていたのですが、本当にお肉たっぷりのまんまるな顔になって、自分がこんなにブスだったとは! 大ショックを受けたのです。
クスリを止めて1カ月半になりますが、未だムーンファイスは満月のまんま。月満ちても欠ける気配は見えません。
この間の怒り、苦しみ、嘆き、葛藤は、筆舌に尽くしがたいものです。
何とか改善できないものかと、悪戦苦闘しましたが、成果はなきにひとしい。
ムーンフェイスという奇禍にみまわれた、かなしくもおかしい現実を赤裸々にお伝えします。
フェイスローラーで小顔づくり
ムーンフェイスは、ステロイド剤使用による副作用としてよく知られています。
投与された量、期間にもよりますが、90%くらいの確率で発症するといわれますから、後遺症に悩まされている人は少なくないでしょう。
原因は、クスリの副作用で脂肪の代謝に異常が生じ、体脂肪の分布を変えてしまうからで、顔の中心部に脂肪が集まってしまうのです。顔の真ん中に脂肪が集まるというのが特徴的で、ご面相が変わってしまい、女性にとっては恐怖の的なのです。
私は、昨秋、甲状腺が腫れ「亜急性甲状腺炎」と診断されて、ステロイド剤「プレドニン」を1日15ミリグラム、これを約1カ月、その後1日10ミリグラムを約1カ月間投与されました。
服用後、甲状腺の腫れや息切れといった症状はすぐに改善されましたが、クスリを止めたころになって、ムーンフェイスがやってきたのです。
それは恐怖でした。ただでさえ大きめの顔が大きく膨らんで、とくに朝起きたときは、瞼が腫れて目もつぶれそう。二目と見られぬご面相でした。時間がたつにつれ腫れは少しは引いていきますが、とても人には会えません。
何とかならないかと、インターネットで「プレドニン 副作用 ムーンフェイス」で検索してみると、同じ悩みを持つ人が続々登場します。
ざっと見てみたところ、有効な方法はないようで、基本的に医師に相談してもムダで、クスリを止めて、時間を待つしかないとのことです。
それでも皆さん、涙ぐましい努力をしておられます。

顔についた脂肪は固定しがちなので、小顔ローラーを転がして、脂肪をほぐす。これを朝晩、風呂上りに毎日行う。1カ月続けたら顔がすっきりしたという報告がありました。
小顔マッサージのおすすめも。マッサージで血液の流れ、リンパ液の流れをよくして、脂肪をほぐし、すっきりさせるというもので、これは一般の小顔マッサージとして知られているものです。田中宥久子さんの美容法がイラストで示されています。
物理的に脂肪をもみほぐして減らすしかないとしたら、ダメもとで私もやってみようと、100円ショップでフェイスローラーを買ってきました。
鏡に向かってコロコロ転がすと、キコキコ悲しげな音がします。最初は朝晩、そのうち時どき思い出したようにやりましたが、効果はなし。そのうちつねっても引っ張っても減らない脂肪に腹が立って、頬をつねりあげたら、赤くあざになって2、3日消えませんでした。まるでおてもやんです。トホホ・・・
塩分排出・少食を心がける
顔の腫れは、むくみのせいもあります。
クスリ(ステロイド剤)には血液中のナトリウムを取り込んでしまう働きがあり、塩分を薄めるために細胞が水分を貯留することになって、むくみが生じるのです。
ムーンフェイスは、脂肪の集中とむくみによる相乗効果ともいえます。
むくみの解消には、塩分を排出する働きのある、カリウムを多く含む食品を摂るのが有効と、何人かの報告にありました。これは、塩分摂り過ぎが気になる高血圧の人にもおすすめです。
カリウムを多く含む食品は、アボガド、パセリ、ホウレンソウ、豆類、海藻類など。
私はアボガド、干し芋、干し柿、小豆を多くとるよう心がけました。
それと、保健師の中西ヒロ子さんのアドバイスで、小食に落としました。食べる量を減らすと、消化吸収の負担が軽減して、排泄能力が増すからです。
ほんとうは絶食すると、からだにたまった毒素が排出されやすくなるので、いちばん効果的なのですが。美容と食欲では、やはり食欲が勝りました。
それでも食事の工夫が奏功したか、それとも時間のせいか、1カ月半をすぎて、やっと少し引いてきたようです。
朝起きたときは未だ膨れているのですが、夕方になるとかなり平常にもどります。
といっても、元の顔がどんなだったか自分でもわからなくなってしまったので、はっきりとはいえないのですが。
揺れ動く女心
ムーンフェイスになって約2カ月。いろいろ考えさせられました。
医師はその病気を治すことしか考えないので、ムーンフェイスくらいの副作用はとりあってくれません。自分で何とかするしかないのです。
中西さんによると、強いクスリでホルモンの分泌が狂ってしまい、代謝に異常が起きてしまったから。私のような年寄り(74歳)は、代謝が落ちているので、なかなか治りにくいらしい。でも時間がかかっても、かならずからだは元に戻ろうとするから心配ない、といってくれますが・・・先が見えないのがつらい。
それにしても、悔やまれるのがなぜ安易にステロイドに頼ったかということです。
私の病気「亜急性甲状腺炎」は、ネットで調べると、とくに治療しなくても時間がたてば治るとあります。(もちろん症状の重いケースは別ですが)
私の場合、甲状腺の腫れや息切れといった軽い症状だったので、自然治癒にまかせてもよかったのかもしれません。(今だからいえるのですが)
でも当初は不安でした。医師も1週間くらい様子をみたのですが、検査の数値がよくないので、ステロイドを処方されました。強いクスリなので、よく効くといわれましたが、本当にすぐによくなりました。そのいみで医師の診断は正しかったのでしょう。
ただ、よく効くクスリは、それだけ副作用も大きいということです。
こんなに長く副作用に悩まされるのだったら、時間がかかっても自然治癒にゆだねるべきだった。からだの代謝のメカニズムが狂ってしまうような治療は受けたくなかったと、うらみがましく思うのです。
私には、天然のクスリ「冷水浴」があったのに、どうしてもっと自信を持たなかったのか。長年の実践で、副腎皮質ホルモンの分泌は他の人よりずっと多いはずなのに。
医師がビックリするくらい治りが早かったのも、「冷水浴」効果と思うのだけれど・・・。
もっと「冷水浴」を信頼して、自信を持つべきだったと、悔やまれるのです。
それでも病気になってしまったのは、やはり年をとって、免疫力が低下したせいで、「冷水浴」は万能薬ではない。仕方がないと、心は様ざまに揺れ動くのです。
「冷水浴」はお守り
小山内先生が「冷水浴」の効果を確認した実験があります。
ステロイド治療を受けているB型肝炎の患者に「冷水浴」を課して、クスリを止めさせた場合と比較して、肝炎の指標となるGOT、GPTの値を調べました。
結果は右図の通りです。
(図をクリックすると拡大します)
この患者(25歳男性)はステロイドホルモン(副腎皮質ホルモン製剤)を投与すれば、GOT、GPTの値は低下するが、中止すれば上昇するという現象を繰り返していましたが、「冷水浴」と適度な運動を課すことによって、ステロイドホルモンの投与なしにそれ以上の効果を持続することができたのです。(『生活習慣病に克つ新常識』小山内博著 2003年新潮社刊より)
小山内先生は、この実験データから、アレルギー性疾患に「冷水浴」は有効であるとの確証を得て、その後多くのB型肝炎、C型肝炎の患者を改善に導きました。
ほかにバセドー氏病や関節リュウマチ、潰瘍性大腸炎などの難病から子どものアレルギーまで、「冷水浴」を指導して、多くの患者を健康に導いてこられたのです。
これまでの先生の実績を見てきて、「冷水浴」はほんとうにすごいと思います。クスリに頼らずに改善できるというのは、何とすばらしいことでしょう。
たとえクスリに頼るにしても、「冷水浴」を取り入れれば、治療効果がアップし、クスリの量を減らすことが期待されます。そうであれば、副作用も軽減することができましょう。
私はこのたび、女心を深く傷つけられて、副作用の恐ろしさを実感。あらためて「冷水浴」の大切さをかみしめました。
皆さんも、ふだんから「冷水浴」を実践されて、いざという時も、できるだけ自前のホルモンでからだを守るようにしてください。
(文責 高木亜由子)
2017年2月28日
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