暑くなって、アトピー性皮膚炎とおぼしき子供を見かけることが多くなった。
真っ赤な顔で泣き叫ぶ赤ちゃん、かゆいかゆいで顔や腕をかきむしる坊や・・・。
つらそうな子供たちを見かけるたび、「水かぶり」を教えてあげたいと思う。
冷たい水を浴びると、かゆみが治まるし、アレルギーの特効薬である副腎皮質ホルモンの分泌が増して、自力でアレルギーを抑える効果が期待できるのですよ!
暑い夏は冷水の刺激は少ないので、その効果は限定的だけれど、これを習慣づけることができれば、治癒への道を歩きはじめたようなもの。
水浴びが気持ちいい今から始めて、真冬に風呂上がりの「水かぶり」を実行できるようになれば、どんなアレルギーも改善されることまちがいなし!
町ぐるみでアレルギー改善に成功!
「水かぶり」でアレルギーを改善した事例は、東京都日の出町の保健師さんたちの取り組みがよく知られている。
日の出町は、小山内氏が町の健康づくりプロジェクトの講師をつとめていた関係で、住民たちにある程度「小山内式健康づくり」は理解されていた。「水かぶり」が普及する下地はあったと思われる。
保健師さんの支援のもと、お母さんがたは子供たちに風呂上がりの「水かぶり」を実践し、ほぼすべてのアレルギー性疾患を改善することに成功したのである。
これらの症例は『今すぐできる体質改善の新常識』(著書リスト参照)にまとめられ、2004年新潮社より出版された。
真冬の「水かぶり」という蛮行(?)を実践し、湿疹がきれいに治まった、ひどい乾燥がきれいな赤ちゃん肌に戻った、風邪をひかなくなったなど、お母さんがたの体験談は、当時大きな反響を呼んだ。
母親自身も一緒に「水かぶり」を実践して、「花粉症が軽くなった」[喘息の発作が出なくなった]「冷え性が治った」「肌がきれいになった」など、おもにアレルギー性疾患の改善例が報告されている。皆さん実名で登場されているので、全部本当の話。
ぜひ、参考にしていただきたい。
「水かぶり」で将来の健康も手に入れる
「水かぶり」は、アレルギーの予防にも有効だ。
水をかけて育てられた「水かけっ子」は、どのように成長したか。
5年後に3組の家族9人の子供を取材したところ、どの子供もアレルギーゼロ。めったに風邪をひかない、新型インフルにもかからない、とびきりの健康優良児だった。
生後6日目の新生児に、水道の水をジャージャーかけたというお母さんは、その効果の持続性に驚くという。当然ながら2人目、3人目も「水かけ」して育て、3人とも病気知らずで手がかからなかったので、フルタイムで働くことができたと胸を張った。
この事例は、2008/11/23のトピックス<「水かけっ子」はアレルギー知らず!>で詳しく紹介しているので、見ていただきたい。
では[水かぶり]はなぜアレルギーに“効く”のか。ここでもう一度簡単におさらいしておきたい。
アレルギーによく効くクスリとして知られる副腎皮質ホルモン。治療に使われるステロイド剤はこれを製剤したものである。
副腎皮質ホルモンは、副腎から分泌して、いざというときにからだのトラブルを抑えてくれる、免疫力の要的存在である。過剰なアレルギー反応や風邪、皮膚の炎症などを抑えてくれる、いわば自前のクスリのようなもの。
ところが副腎がしっかりしていないと、いざというときに副腎皮質ホルモンが十分に分泌されない。分泌量が少なくて、トラブルを抑えきれない。
そこで、からだに冷水をかけるというショックをあたえると、副腎は刺激されて活性化し、からだを守る副腎皮質ホルモンの分泌が促進される。
つまり水をかけて、からだの危機管理能力を高め、からだを守ろうというわけだ。
副腎は、暑さ寒さなどの刺激やストレスにさらされるほどしっかり育ち、よく副腎皮質ホルモンを分泌するからだになる。ぬくぬく育つほど、副腎の発育は不十分で、副腎皮質ホルモンの分泌は不足気味だ。
小山内氏は著書の中で語っている。
「日本や先進諸国の子供にアレルギーが多いのは、文明化された生活環境で過保護に育つから。40年、50年前の日本には、アレルギーを持つ子供などほとんど見られなかった。当時は冷暖房など一般的でなかったし、子供は外遊びで暑さ寒さにさらされて育ったから、しっかりした副腎を持っていたのはまちがいない・・・」
では今さら昔の生活に戻れといっても現実的ではない。そこで1日1分、風呂上がりに冷水をかぶって、副腎を鍛えましょうというのである。
小山内氏は子供のからだが年々劣化していくのを、深く憂慮しておられた。
とくに子供に「水かぶり」を強くすすめたのは、アレルギーの予防だけでない、しっかりした副腎を育てて、将来にわたって抵抗力のあるからだをつくろうとの深慮である。
「水かぶり」の方法は、当HP「水かぶり」の項目を参考にして、実践していただきたい。
すべての小学校に冷水シャワーの設置を
小山内氏は生前、東京都八王子市立第四小学校で5年生58人の児童に、健康づくりについてお話をされた。(上写真)
内容は次の2点
(1) よく運動してしっかりしたからだをつくること
これは背そらし、背のばしの小山内体操をして、体幹筋を鍛えましょうというもの。(右写真)
(2) 冷たい水を浴びてからだをしっかりさせる
「水かぶり」の大切さを説いたもので、残されたメモによると次のように語っている。
「・・・冷水浴については、風呂上がりにシャワーでならば、約1分間ぐらい頭からしっかりかけてほしいし手桶でかけるならば、10〜20杯ぐらいがんばってほしいと思います。少しぬるめの水で慣れればかけられるようになります。
水は冷たいので、からだの表面は熱が逃げていかなくなるので、あとでかえってぽかぽかあたたかくなってくるのです。そして、バクテリアやウイルスなどからだの敵とたたかって、打ち勝つ力がつくので、風邪をひきにくくなったり、アトピー性皮膚炎や花粉症に打ち勝つことができるようになるのですから、しんぼうづよくがんばってください。・・・」
このとき季節は2月の寒中であったが、話を聞いたあと、風呂上がりに水をかぶっているという子供は半数以上に達したそうだ。
小山内氏は「子供はきちんと話せば分かる」といって、直接語りかけることを好んだ。
アトピー性皮膚炎や喘息を抱えている子は、自分がつらいから、納得すれば進んで行うのではないだろうか。
文部科学省によると、アレルギー対策として県により「アトピー性皮膚炎児に温水シャワー等の設備の充実を図っている小学校」もあるようだ。温水ならば、副腎を鍛える効果は期待できない。
それより、アレルギーに関する小山内理論を認めて、すべての小学校に冷水シャワーを設置して、運動のあとに浴びるよう義務づけたらどうだろうか。冷暖房が完備して、暑さ寒さの刺激を受けにくい現代の生活では、これくらいのことをしないと、子供の健康を守れないような気がする。
成長期にしっかりした副腎を育てることは、将来の健康をも左右する。よく発育した副腎を持てば、生涯にわたって身を守る能力を身につけたことになる。
副腎の発育は身長が止まるまで。成人してからでは、それ以上の副腎はのぞめない。
じつに「水かぶり」は、子供にとって最高の健康保険なのである。

※写真は生徒から小山内氏に送られたお礼の手紙集「すてきな心カード」より抜粋。

(文責 高木亜由子)
2010年6月25日  

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