胃痛は食事の摂り方が原因だった
中村文人さんは、大手経済書出版社に勤務し、書籍の編集に携わっています。
身長170センチ、体重52キロとスリムですが、強靭な印象で、50歳とは思えない、 軽やかな青年の雰囲気を漂わせています。
しかし10年前、今の会社に入った頃は、いつも胃に鈍痛を抱えている、 青白き編集者でした。当時の模様からお話いただきましょう。
社の定期健診ではやはり胃がひっかかりました。再検査してみると、ポリープが5つもできていることが判明しました。幸いポリープは良性で、がんに移行する心配はなかったので、経過観察で様子をみることにしましたが、不安でした。
ポリープのせいか、持病なのか、慢性的に続く胃の痛みをなんとか改善したいと、3年くらい前に、食べる量を減らそうと決心しました。
きっかけは、ある日昼食を軽くしたら、胃の調子がよかったからです。もうひとつ、昼食をしっかり摂ると眠くなり、大事な会議でもがまんできないほど眠くなるので、それを避けるためでした。
ちょうどその頃、小山内博著『生活習慣病に克つ新常識 まずは朝食を抜く!』という本に出会い、決定的な影響を受けました。この本を読んで、胃が病むのはなぜか、すべてが氷解したのです。
すなわち、ものを食べたら眠くなるのは自然なこと。食後のからだは、消化吸収のため血液は胃に集まり、消化酵素であるペプシンや胃酸をさかんに分泌して、消化活動にいそしんでいる。そのとき脳や筋肉の血液は少なくなって、活動は休止の方向へ向かい、副交感神経の働きで、心臓の鼓動はゆっくり、まぶたは重くなり、眠くなる・・・。
このときに、食休みをとらずに活動をすれば、血液は筋肉や脳にまわってしまう。胃腸は少ない血液しか得られず、食べたものに見合うだけの消化液が分泌されないから、常に消化不良の状態にあり、胃が重い、もたれる、違和感があるということになる。そのうち胃壁が赤くただれて、いつも胃がしくしく痛むようになり、慢性胃炎ということになる・・・
まさに自分が悩まされている症状と、ぴったり同じでした。
朝食摂取が胃腸を傷つけるという説にも納得でした。
朝はこれから活動が始まるとき。しっかり食事を摂っても、消化の真っ最中に通勤や通学にエネルギーをとられ、すぐに仕事や勉強が始まれば、血液は分散してしまい、消化は十分に行われません。これが毎日のこととなれば、長い間に胃腸はダメージを受けます。
今までからだのためにいいと思って摂っていた朝食や昼食が、いかに胃の負担になっていたのか、目からウロコが落ちる思いがしました。
地元吉野地方の胃がんに学ぶ
衝撃的だったのは、奈良県吉野地方に多く見られる、林業労働者の胃がんの話でした。
かつて吉野地方は有数の林業地帯で、そこで伐採に従事する林業労働者に胃がんが多発し、奈良県の男性の胃がん発生率は日本一として知られていたのです。
私は奈良県出身なので、その話はよく知っていました。
母親も20年前に胃がんで全摘手術を受けていますし、当然血をひいていますし、常に胃に違和感がありましたから、胃がんは恐怖でした。
小山内氏によると、吉野の林業労働者の胃がんは、茶がゆを食べてすぐ、のこぎりを引いて木を切るという重労働のせいというもので、私の頭の中ですべてが結びつきました。林業労働者の胃がんは、食後の重労働が胃がんにつながるという、典型的なパターンだったのです。
自分が小山内理論を素直に受け入れることができたのも、奈良県出身で、地元林業労働者の胃がん発生の状況を実際に見聞していたことが大きかったと思います。
朝、昼を軽くして、たちまち胃痛解消
小山内理論で確証を得てから、それまで摂っていた朝食を止めて、バナナ1本と飲み物だけにしました。バナナなら消化の負担にならないし、それくらいの糖分をとってもいいと思いまして。
昼食はクッキー数枚とコーヒーか紅茶です。
夜はふつうに摂ります。
それで空腹を感じないのです。
小山内氏の「食べると血糖値が上がり、そのあと急激に下がって空腹感を覚える。食べないと、そこそこの値に血糖値は保たれ、強い空腹感は覚えない」という、逆説的にも思える生理メカニズムがからだで理解できました。
仕事が長びいて、わずかな昼食を食べそこねても、まったく平気なのです。たまにおなかが空いたなと感じると、小さなスイーツやヨーグルトを口にするだけで癒されます。
精神的にも「食べないと倒れる、からだに悪い」という強迫観念から解放されて、すごくラクになりました。
おかげで胃の調子はすっかりよくなりました。あれから3年近くなりますが、1度も胃が痛くなったことがありません。
胃が丈夫になっただけでなく、風邪もひかなくなりました。
これは小山内式健康づくりの1つ「水かぶり」のせいかもしれません。「水をかぶって副腎を刺激して、副腎皮質ホルモンの分泌を促し、からだに抵抗力をつける」という理論にひかれ、実践しているのです。
全体にからだが壮健になった気がします。体重は52キロと少ないが、仕事のあと疲労が蓄積しないし、睡眠時間も4〜5時間で足りるようになりました。からだが本来のあるべき姿に近づいたとでもいうのでしょうか。自然体で元気でいられます。
会社の健診でも、胃以外は、すべてAです! 5つあったポリープは、いつの間にか3つに減りました。
仕事がら人に会うことが多いのですが、いつもからだの状態が万全であることが大きな自信と安心感につながっています。
欲望と思い込みが健康を妨げる
自分が健康になったので、周囲の人にも食生活の見直しをすすめるのですが、ほとんど聞いてくれません。「食べなきゃ倒れちゃう」「腹が減っては戦ができぬ」とばかり、朝からどんぶり飯を食べている人さえいます。まちがった健康常識を鵜呑みにしている人を見ると、自分がかつてそうだっただけに残念でなりません。
出身の奈良県の高校の同窓会で集まると、仲間たちはメタボばかり。私ひとり昔のままの体型で、「おまえはいったいどーしているんだ」と聞かれ、正直に話せば仙人扱いです。
食事を抜くというのは、それほどイヤなことなのです。
健康になるのは簡単なのに、人間の欲望が健康を妨げているのです。
聞いてくれない人が多い中で、うちの社の後輩たちが少しずつ影響されてきているのは、うれしい限りです。
健全なハングリー精神が育つ
きちんと食べるのは夜だけという生活になってから、その1回の食事がすごくおいしく感じられるようになりました。昔の人のように、 ひとつずつよく味わっていただき、おいしく食べられることのしあわせをかみしめます。
飽食をしていないので、ときにハングリー精神が生まれたように感じることもあります。 自分は編集のほかに、童話を書いて絵本や子供の本を執筆し、 出版もしていますが、体力がついたせいで、仕事を終えてから、また休みの日など遊んだ後にも、 原稿を書こうという馬力が残っている。以前だったら考えられないことです。この先定年になったら、 本格的に童話作家の道を進むつもりです。
これがもし3食をきっちりと、おいしいものを食べる生活をしていたら、おそらく満たされすぎて、 現状に安住してしまい、チャレンジ精神は起こらないのではないか。
ハングリー精神があるからこそ、やりたいことや、自己実現への欲求が湧いてくるのではないかと思います。
中村さんは、体力がついて、童話作家としても活躍されています。豊かなイマジネーションから生まれた、 すてきな絵本をご紹介しましょう。
新しいえほん『みんな だいじな なかま』
中村文人(文) 狩野富貴子(絵) 金の星社(2007/07刊)
森にすむオオカミとサルの仲間たちを巡る、心あたたまるお話です。
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『おとうじゃ、ないって』
中村文人(文) 村上康成(絵) 佼成出版社(2009/04刊)
ウツボがある日、1000ぴきの子供のおとうになってしまった話。
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(2009年6月23日)  
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