再発ゼロのうれしさを伝えたい

医学は進歩しても、腰痛者は増えるばかりです。
その人たちの多くは、整形医や整体師、整骨師、カイロプラクチック、鍼灸などに頼りますが、一時はラクになっても、再発をくりかえし、完治することはありません。 座間光さん(65)もそんな1人でした。
30代からぎっくり腰をくりかえし、慢性的な痛みを抱えていた座間さんが、腰痛と決別することになったのは、小山内氏との出会いから。
当時座間さんが勤めていた住友スリーエム(株)は、小山内氏を嘱託医として迎え、月に1度、受診日をもうけていたのです。
そこで診てもらった座間さんは、小山内氏に全面的な信頼を寄せ、指導を受けることになりました。
その結果、3年余で完治にいたり、以来25年というもの再発はありません。
1昨年63歳で退職したあとは、自宅で小山内式を日課とし、腰痛はおろか内臓もまったく問題なく、元気な日々をおくっています。
座間さんは自身の体験から「小山内体操こそもっとも理にかない、腰痛改善に結びつく最良の方法」と確信しています。
座間さんの経験は、小山内氏の業績を記した本『企業の現場から19人が語る小山内博の健康づくり』(2006年刊 高木亜由子編)の中に収められています。
ここに本人了解のもと、腰痛に悩む多くの人たちの役に立てていただきたいと願い、全文を採録させていただきます。

背そらし50回。背のばしも50回。座間さんは、この体操のみで25年間腰痛防止に成功している。「継続」おそるべし!

腰を伸ばして行う
私は腰痛持ちで、先生の来社日に相談に行きました。今から8、9年前のことです。
先生は私の話を聞いて、背骨をたたいたり、背中の様子を診て、「とにかく背骨の脇の筋肉を固めなさい」といわれました。 そのために背筋と腹筋の体操をやるようその場で指導され、「まず背筋から始めて、次に腹筋をやるように。 この順序を間違えないように」と強く念を押されました。
目標は背そらし(背筋)50回、背のばし(腹筋)50回です。
はじめは痛みをこらえながら各20回。1〜2カ月たって各10回増やし、30回ずつ。それから2カ月くらいおいて各10回、さらに2ヵ月おいて各10回ずつ増やして50回。 半年で目標値ができるようになりました。やっているうちに筋肉がついて、筋力がアップし、痛みなく続けられるようになりました。
この体操で私が興味を持ったのが、腹筋の体操でした。従来、腹筋の体操は膝を曲げて行なうのがセオリーでした。腰をいためるからという理由です。 それが、先生の体操は膝を伸ばしたまま行なうのです。 聞いてみると「背筋から始めれば、それが次の腹筋の体操の準備運動になっているから、背筋をきっちり50回やれば問題ない」といわれました。それで順序を間違えないように言われた理由がわかりました。
膝を伸ばしてやると、背腰筋が十分に伸縮して「 効く 」という実感がありました。
半年たって、痛みはほぼ解消し、それ以降は、目標値を週に4回実施し、3年ほどで腰痛は完全に治癒しました。
腰も膝も栄養失調だった
長年腰痛で苦しんだ私にとって、あの体操は救世主でした。これまでにも様ざまな療法を試みましたが、小山内先生の体操は、これまでとは決定的に違いました。
先生の体操は、膝を伸ばして行なうほか、背そらし・背のばしとも、1回やるたびに2呼吸という「間」をおきます。 背そらしはパッと上体をそらしたら、すぐさまうつ伏せになって2呼吸、背のばしも上体を起こしたら、すぐにあおむけになって2呼吸おきます。
先生によると、腰痛は背腰筋の運動不足で、筋肉や骨、靭帯に栄養が十分に行き届いていないから、硬く、粘りがなくなって、痛みが生じる。 とくに背骨をつなぐ靭帯が、栄養失調で硬くなっていることが主な原因である。そこで、効果的に栄養を補給するために考案されたのが、あの「間」をおくという体操です。
背腰筋をそらし、たわめることによって、骨や靭帯、腱に酸素と栄養を含んだ体液が送り込まれる。 体液は少し間をおくことによって、隅々まで十分に行き届く。 これをパッパッと立て続けにやってしまうと、栄養を送り届けないうちに体液が戻ってしまう。そこで2呼吸という「間」をおくのです。
実践し、理論を聞いて、あの体操の治癒力のわけがわかりました。今まで何をやってもよくならなかったわけもわかりました。 私は走るのが好きで、ホノルルマラソンを走ったこともあります。家から工場までは走って通勤し、毎日走る運動を欠かしませんが、 それで足腰が丈夫になるとはいえないのですね。走ると足の筋肉はつくが、上半身は腰が細くなる。バランスが悪いのです。腰を鍛えるには、前屈、後屈といった全身運動が必要なのだということがよくわかりました。
腰痛が解消して、人生が明るくなりました。
私の腰痛歴は長く、20代前半にぎっくり腰をやって以来、3〜4年おきにくり返し、30を過ぎてからは頻繁にくり返し、職場も替えてもらうほどでした。あの体操をやるようになってから、物を持っても腰の筋肉にピッと力が入り、まったく不安感がなくなりました。自分で背骨の脇をさわっても、筋肉がしっかりついていて、頼もしくなります。
50代に入った頃、膝に違和感を覚えたことがあります。
先生に相談したら「屈伸をしなさい」とのこと。目の前でやって見せてくれ、その通りに20回やったら、その場で違和感がなくなりました。
腰痛と同じ理屈で、膝の運動不足で栄養が不足しているから、膝屈伸をやって膝に栄養を補給してやるということです。その日から今日まで毎日20回の膝屈伸、そして週4回の体操、この2つは欠かしません。
ふけにも水かぶり
水かぶりも6〜7年続けています。
50歳を過ぎた頃から、頭のふけに悩まされるようになりました。ふけのあとは表皮が傷んで、赤い粒々状になってしまいます。皮膚科へいったら、疲労性湿疹と診断されました。クスリをもらいましたが、小指程度のクスリを頭皮全体に塗れば、すぐになくなってしまいます。いいシャンプーがあると聞いて試したが、これも最初だけで効果なし。
こうなったら小山内先生しかありません。先生は話を聞いただけで「水かけをしなさい」のひとこと。その日から始めました。まだ先生の本を読んでいなかったので、理屈はわからなかったけれど、腰痛は治るし、膝痛は治るしですから、先生はまちがいない。
すぐに効果がありました。それからは毎日です。1日だってやらないと、翌日ふけがひどいのです。丸3日水をかぶらないと、頭皮に赤いブツブツができてしまう。もう水かぶりはクスリみたいなものです。
あとで先生の本を読むと、冷水で副腎を刺激して、副腎皮質ホルモンの分泌を促し、皮膚の炎症を抑えるという。理論的にも完全に納得です。
災害に役立つ小山内理論
いつしか先生の言うことは絶対的に信じるようになりました。
あるとき休肝日は必要かどうか聞いたことがあります。先生「毎日飲んでも、運動や労働して、きっちりアルコールを燃やしてしまえば問題ない。 アルコールをとって、何もしないでゴロゴロしているのはよくない」とのこと。 確かに運動したあとは気持ちよく、おいしく飲めるし、調子のよくないときは3日も4日も飲みたくない。先生のいわれるとおりです。
「朝食抜き」も本を読んで実践していましたが、自分の場合、1日1回抜くとしたらいつがいいのか相談してみたことがあります。 先生「会社へ来て、からだを使って仕事をしている場合は、昼を抜いたほうがいい」といわれました。 昼飯食べたあとは眠くなるから、事故につながりやすい。労働科学研究所のある調査では、工場では午後2時頃にもっとも労災が多いとのことでした。
先生の「朝食抜き」の根拠は、「活動前の食事は消化を妨げるから控えるように」というものですから、その人の生活に合わせて指導するわけです。 夜勤明けの人にとっては、朝食は仕事のあとの食事です。そこを誤解して、「朝食抜き」なんてとんでもないという人がいるけれど、小山内理論がわかっていないのですね。
それ以来私は、朝食はきちんと食べて、夜はもっとしっかり食べて、昼は水2杯というパターンです。 それで体重は維持できています。昼になると、長年の習慣で消化のために胃酸が分泌されるが、そのときにコップ2杯の水を飲めば、胃酸は薄まり、問題なし。 昔は舌にこけが生えたりしたが、今はそんなことはまったくない。
食事の話で印象に残っているのが即身仏です。 お坊さんが即身仏(生き仏)になろうと、水だけ飲んでおこもりしたけれど、30日たってもまだ死ねなかったという話です。
それなら地震などの災害が起きても、1週間や2週間何も食べなくても水だけ飲んでいれば平気だということですね。 だったら何も大騒ぎすることはありません。
以前、地域の自治会長をやった時に、防災訓練で炊き出しや非常食の配布をやったことがあります。 そのときに言いました。「水は大事だけれど、食べ物は1週間や2週間なくても大丈夫。ダイエットになるから、かえってからだのためにいい」と。 水だけ飲んでじっとしていればからだがきれいになりますから、こんなチャンスはありません。
だいたい、あわてて食糧を求めるから、カロリーを使って消耗するのです。 よく大きな建物の下敷きになったお年寄りが助かるのは、あきらめて騒がないから、どうせダメだと思って、おとなしくお迎えが来るのを待っているから(?)です。 若い人は何とか出ようとあがくから、カロリーを使い、脱水症状が起きる。
こういうときにこそ先生の教えを生かし、水だけ飲んでじっとしている。そういう教育をしてもらいたいですね。
小山内式で長生きする
先生には腰痛から始まって、いざというときの身の処し方、生き方まで教えてもらいました。医者以上、人生の師でした。
亡くなられてからさみしくてしょうがないです。先生を忘れることはありませんよ。だって小山内式を毎日やっているから。
先生はもっと言いたいことがあったと思いますが、このご時世だから理解する人は少なかったと思います。先生のいうとおりにやっていたら、お医者さん失業しちゃうから。
世の中、データベースがおかしいから、みんな何が本物か見極める目を持って自分で努力しないと、健康なんて守れません。
この機械文明社会のもとでは、からだはどんどん弱体化するし、ストレスもあるし、企業は利潤追求で、成果主義に走っているし、サラリーマンは生きていくのもタイヘンです。
私はこうなったらできるだけ長生きして、この先どんな世の中になっていくのか、この目で見てみたい。そのためにも、一生小山内式を実践します。

頼られる幸せ

座間さんは今も、体操は週4回、ぶら下がり器具を横に固定して、背そらし50回、背のばし50回を実施しています。
これは精神的にもたいへんいいそうで、「女房とケンカして一方的にやられても、1回、2回・・・と数えながらやっているうちに気持ちがよくなって、 ストレスはきれいに解消する」のだとか。
ランニングは夕方、食事前にゆっくり30分〜1時間。
冷水浴はもちろん入浴時に毎日。
食事は朝、昼は軽くパンや麺類を、活動が終わったあとの夕食はしっかりと。
小山内式健康づくりはすっかり定着して、毎日の生活習慣となっています。
スポーツは、近くに公共の体育施設があり、65歳以上は無料なので、こちらもマシンなどよく利用するそう。
とにかく健康なのでフットワークが軽く、皆に重宝がられ、親族の介護にも借り出されています。
座間さんを見ていると、
「健康であるということは
人に迷惑をかけないということ、
他人に対する思いやりだよ」
という、小山内氏の言葉が思い出されます。
(文責 高木亜由子)
2011年10月28日  

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