アメリカ・ジョージア州からはるばる後生掛(ごしょがけ)温泉へやってきて、「小山内式健康づくり」に励んでいた松川さん。
その後の成果が期待されたところですが、残念ながら「健康づくり」を中断して、帰国してしまいました。
わずか1週間余りで著しい改善効果がみられたのに、
本人も張り切っていたのに、
いったいなぜ?
どうやら松川さん、自分で自分を律する「健康づくり」が重荷になってきたようです。
今回は、生活習慣を改善することの難しさについて考えてみます。
N保健師10年来の「健康合宿」からの報告です。
前回お伝えした通り、松川さんはN保健師の支援のもと、朝晩の小山内体操、温泉での冷水浴、小食等を実施。
わずか1週間で5キロ減、不眠、頭痛、吐き気、げっぷ、腹部の膨脹感の消失など、本人も驚くほどの改善効果が見られました。
このままいけば、さらなる不快な症状の解消・改善が期待されたところですが、
サポートしていたN保健師が去ってから、リズムが狂いはじめました。
どうやら松川さん、ひとりで「健康づくり」メニューをこなすことは難しかったようです。
予定を早めて後生掛温泉をあとにして、帰国されたとのことです。
「健康づくり」を継続することの困難さを、思い知らされます。
しかし途中で挫折したとはいえ、松川さんが得たものは少なくありません。
2、3週間、しっかり実践した「小山内式健康づくり」の手法は、からだにしみついて、いつかどこかで再開されるのではないでしょうか。
その後の経緯、そして湯治場での「健康づくり」について、N保健師の報告を伝えていただきます。


9月23日に後生掛温泉で松川さんに再会して、「小山内健康づくり」をスタートしました。
順調に改善効果がみられたことから、体操、冷水浴、小食を継続するように伝えて、私は職場へ戻りました。
不安はありましたよ。
「健康づくり」は自分との闘いですから、ひとりではなかなか継続しにくいのです。
だれかがそばにいて見守ってあげたり、仲間がいて励ましあったりしないと、甘くなってしまう。
長年保健師をやってきて、ほとんどの人がそうだということを見てきましたから、松川さんもすんなりいくとは思っていませんでした。
経過が気になって、1カ月ちょっと過ぎた頃、11月1日から3日まで様子を見に後生掛温泉へ行ってきました。
案の定、すっかりゆるんだ生活になって、相部屋でなかよくなった人たちと日がな一日お茶のみして、美味しいものを食べていました。
体操も体調が悪いと中断。消灯(9時)になっても眠れないので、談話室で過ごし、深夜になって寝る。翌日は10時近くまで寝ているという悪循環に。
せっかく温泉という絶好の場で、からだが温まり、体操、水シャワーで血液循環がよくなり、細胞が喜んで働き始め、臓器が活性化して、様ざまな自覚症状が消失・改善していたというのに。
よく説明して理解を求めました。
3日間一緒に過ごして、きっちりおさらいして、しっかりメニューをこなすよう励ましてきました。体操仲間もできて、このまま継続できたらと願いつつ下山しましたが・・・、やはりダメでした。
むりもないかもしれません。アメリカでの生活とはまったく異なる環境で、長期間1人で「健康づくり」に励むのは、厳しすぎるかもしれない、と思います。
連絡が途絶え、まもなくアメリカに帰ってしまったとのことです。


私はこれまで30年近く、多くの人たちの「健康づくり」を支援してきて、「自分で自分の健康をつくる」自助努力の難しさを知りつくしています。
現代人は、どこか悪ければクスリや医療機関に頼るのがあたりまえです。
生活習慣病は、文明の生活にどっぷり使って、からだの法則性に反する生活を長年続けてきたせいで発症した、という認識がないから、それまでの生活を改め、むち打ってやらなければならないことなどできません。
冷水浴にしても体操にしても、最初から受け入れてくれる人はほとんどいない。
松川さんのように最初から素直に受け入れてくれた人は稀といっていいくらいです。
けれど、素直に受け入れた人は「幸いなるかな」です。
これまであの体操を1回でも体験したなら、誰もが「背中がすごくあたたかくなって、気持ちいい!」と感嘆の声をあげます。
腰痛持ちで、おっかなびっくり行なった人も同様に、驚きの声をあげます。
もちろん安全性は「30年間無事故。どんな腰痛者も、うつぶせになって、からだにかかる重力に抗して、自分の筋力で持ち上げて反らせることになるので、安全」という小山内先生のおすみつき。
後生掛温泉でも、多くの人がこの体操にはまりました。
喘息の持病を抱えたSさん。定年を迎え、ゆっくり療養しようと湯治にやってきたのはいいが、温泉効果でからだ全体があたたまり、一晩中咳と痰に苦しみました。相部屋の方々に迷惑をかけるからと、湯治を中断し早々に帰るつもりが、私たちの「健康合宿」に出会い、一緒に朝晩の体操、冷水浴、少食を実践することに。
開始してから6日間、喘息発作は1度も起きず、痰が出やすくなったので、ふだんの呼吸も楽になり、ゼイゼイ音がしなくなりました。
体重も5キロやせて、ベルトの穴が3つ移動。
Sさんは「からだにいいと言われるものならどんどん食べて、運動は呼吸がゼイゼイするので一切しなかった」生活を改め、小山内式を生活習慣にすることに。
2年後に再会したSさんは、見違えるように溌剌していました。

Sさんの変身ぶりをとなりで見聞きしていたご夫婦(奥さんは看護師)も、私たちの「健康合宿」に興味津々。
ここが大部屋のいいところで、他人の経験を共有できるのです。
Sさんの喘息の回復ぶり、スリム化を目の当たりにして、黙っていられなくなりました。
まずご主人が「やがて車椅子生活になると医者から申し渡されている。この体操はどうだろうか」と声をかけてきて、夫婦でスタート。
ご主人は、体操を終えるやいなや、「気持ちがいい!」と叫びました。奥さんも「えっ、こんなにラクな体操だったんだ。すごく気持ちがいい」と驚きを隠しきれませんでした。
体操が日課となるや、ご夫婦は人目もはばからずけんか腰でやりあう場面が多かったのですが、お互い口よりからだがさっさと動くようになったせいか、穏やかに話すようになりました。
その後も毎年のように一緒になりますが、奥さんはスリムに、ご主人は根をつめて書道をやっても腰痛にならないと喜ばれています。
また1年の大半を湯治場で過ごすという、元大学教授(80)もSさんのケースを目撃して、参加申し込み。先生も体操が終わるやいなや「これは気持ちいい!」とその日から続けています。
この先生は健康に強い関心を持ち、実践する意欲も高い方。この11月に再会した際に「僕はこれほど効果の高い体操を今まで経験したことがない。これを普及させるため体育館に専任のインストラクターをおくよう、市にかけあいにいくつもりだ」と言っておりました。
先生、体操を続けて、様ざまな効能を確認できたのでしょう。
そういえば、この体操を横で見ていた某大手製薬会社のOBが、「よく計算されつくした体操だ。体幹筋を一気に使うわけだね」と感心していました。
私も、長年多くの人と体操をともにしていますが、その効能ははかりしれません。
肩こり・腰痛の予防、改善のほかにも、不眠や無気力、だるさなど不定愁訴やストレスを解消し、疲れにくく、粘り強いからだをつくるなど。
生活習慣病の入り口にいる人々を、健康への道すじに引き戻しているのです。
この体操のどこがどこの神経に奏効するのかわかりませんが、とにかくいろいろな症状に「効く」のです。
開発者の小山内先生自身にもその効果ははかりしれないようで、ある企業の女子従業員に肩こり・腰痛防止にこの体操を課していたところ、後に出産した彼女たちは、全員超安産だったそう。先生はうれしそうに話してくれたことがあります。

体操の気持ちよさ、効能を知ってしまった人は、症状が改善しても続けているようです。中断してしまった人も、調子が悪くなれば、からだが覚えていて、いつの間にか再開しているといいます。
松川さんは中断してしまいましたが、1カ月近く実践した「健康づくり」は、しっかり身についているはずです。
この体操は、健康な人にもおすすめです。
機械文明下に生きる現代人は、からだを支える体幹筋を大きく動かす機会はほとんどありません。頭や手先ばかりを使う労働の偏りからいろいろな問題が生じるのですから、ふだんの生活で体幹筋のトレーニングを取り入れることはとても大切です。
松川さんも、車社会のアメリカでは、足腰、体幹筋を使うチャンスが少ないでしょうから、予防の面からも小山内体操は役に立ちます。
冷水浴も、暑さ寒さといった刺激の少ない生活をおくる現代人にとって、最も手軽にできる副腎の活性化、副腎皮質ホルモン分泌の促進法です。風邪、アレルギーの防止・抑制の特効薬です。
「小山内健康づくり」は、現代人にとっての必須メニューです。
身につけたら、一生の財産となるでしょう。

 

松川さんが中断してしまい、朗報をお届けすることができませんでした。
しかし、「小山内健康づくり」はしっかりと松川さんの骨身にしみ込んで、アメリカで再開しているかもしれません。
小山内式はいつどこでも、できるのですから。
いつかある日、「元気になりました!」というメールがN保健師の携帯に飛び込んでくる、
そんな日が来ることを期待しています。
Nさん、お疲れ様でした。

(文責 高木亜由子)
2010年12月25日  

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 更新日   2021年11月21日