今年、小山内式が飛躍します。理論から実践へと

必要にせまられて開眼

高木 今、日本は、空前の健康づくりブームの渦中にあります。TVや新聞、雑誌を開けば健康法やら健康にまつわる話のオンパレード、CMはサプリや健康食品が大手を振っているし、まったく健康関連産業は不況知らずですね。
藤澤 サプリのCMはすごいですね。あれを見ていると、すべて自分に引っかかり、全部飲まなくてはだめだと思わされる。そこからどう自己防衛して、自立するか。
中西 食品産業のめざましい進化で、ラクをしていくらでも美味しいものがつくれるし、手に入る。食べすぎて何かあったらクスリで対応する。
効くか効かないかわからないが、大概の自覚症状に対応するクスリは、医師の処方箋なしでも大型薬局に行けば手に入る。
藤澤 とにかく人間は欲望に弱いし、どこか悪くなっても、自分で努力しないでよくなろうとする。しかもクスリには即効性がある、と信じ込まされるから、小山内式のように、肥満なら少食に、腰痛なら体操を、それも持続してというのでは、とてもたちうちできない・・・
高木 以前、NHKの「ブラタモリ」という番組で、加山雄三が「自分は40年欠かさず朝晩水かぶりをしている。これが健康の秘訣」と言っていたそう。それはすばらしい、ぜひ取材させていただこうと思っていたら、いつの間にか某食品メーカーのCMに登場されて、 ○○を飲んで若さと健康を保っていると。ああ、もう取材には応じてもらえないとあきらめました。
藤澤 企業で社員の健康づくりを指導した経験からいうと、人間元気なうちはいくらいいといわれても、なかなかやらない。必要にせまられないと。自分はひどい腰痛を患って、小山内体操でよくなって、ふだんの健康づくりがいかに大切か思い知らされた。
高木 今でも継続されていますよね。
藤澤 もちろんです。32か3で腰痛をやって、しかも2回やったんですよ。社員の先頭に立って健康づくりを導く立場の人間が、体操をサボって腰痛に苦しみ、赤っ恥かいたんです。(その顛末は2016/8/31に掲載)あの苦しみは2度と味わいたくないと、あれ以来30余年1日も欠かしません。おかげで今、若い時より腰はいいみたいです。年齢よりも何十年と継続して鍛えていくことの方が大事ですね。
小山内先生を知る人も少なくなった。
残された貴重な2人。
中西 今、20代の女性2人と、60代の女性2人、週に1回家に来てもらってあの体操を指導しているの。3カ月たって、60代の脊柱管狭窄症で始めた人はしびれがなくなり、もうひとりの椎間板ヘルニア手術の既往症のあった人も、しびれがなくなった。2人とも肩や背中の痛みがなくなり、からだが軽くなったとすごく喜ばれている。
60代くらいの人はからだの歪みをいっぱい背負っているから、からだの歪みを治すときの反応で痛みが出る。だから3カ月くらいは、時どき相談できるようにしておく必要がある。
20代の2人は、ホント早いですね、1カ月たってもう快適そのものですって。
肩こりは解消、パソコン操作の際の眼のしょぼしょぼ感もなくなったと喜んでいる。
体重も1カ月過ぎたところで2キロくらい落ちて、それ以上にとくに上半身が締まってみえますね。

若い女性は3カ月できれい・やせる・ヘルシー

高木 小山内先生はとくに若い女性に理解して、実践してもらいたいと思っていましたね。その人たちにどうやって働きかけますか。
中西 20代の人は動機づけだけ。あなたは自分のからだをどうしたいのと聞くと、たいてい「やせたい」というから「3カ月後に必ずやせるからね」と約束する。その期間に、いかに食べていたかを振り返ってもらう。20代はまわりお菓子だらけですから。
「あなたの食事が終わって、それから体内では胃腸や膵臓や肝臓が働き始めるのよ。だから食事が終わって2時間もしないうちにおやつなんて食べたら、消化器はずーっと働かされっぱなし」というと、「かわいそー」なんて言っている(笑)
そういう話をしてあげて、肥満、便秘、胃炎、すべて食べ過ぎからきていることをからだと頭で理解してもらう。
高木 若い女性は母親予備軍ですから、とくに大事。
藤澤 私が日軽金にいたころ、先生は何度もお母さん方を集めて講演をやってくださった。 それは母親が学習し、理解すれば、子どもに反映されるという期待があったから。
中西 私たちはおなかに命を宿したとき、いちばん自分の健康を考えるんですね。
だから妊婦が受講する母親学級なんてものすごく大事なんだけれど、内容は育児用品をどう準備するか、赤ちゃんの沐浴の仕方などということに終始している。
それより命が育まれるということはどういうことか、10月10日お腹にいる間にどのように変化して生まれてくるのか、といった基本の学習をさせてくれるところがどこにもない。お産を受け入れる病院側は、お産のはじまり、入院するタイミング、分娩の経過、それに伴う呼吸法の指導といった内容でしょう。
高木 妊婦はどこへ行けばいい?
中西 新しく生命を宿した女性が必ず出会う専門職は、保健師、助産師です。からだの営み、そして自分のからだは自分の食べたものでできてくるということ、母親の生活自体が胎児の発育に大きく影響することを理解してもらうのが、私たちの仕事です。
さらに、しっかりお産ができる妊婦の体力を推しはかった指導が必要です。自分の満足がいくお産ができた人は、赤ちゃんを育てていくときの意識も違うと思う。
高木 今のお母さんは無防備で情報化社会の中に投げ込まれたかのよう・・・
中西 今多くの若い女性がアトピーや皮膚のトラブルに悩まされ、生理痛も多い。それを市販のクスリでしのいでいる。小さい時から皮膚の湿疹、乾燥などでお母さんからクスリやクリームを与えられているから、抵抗なく飛びつくんですよ。
話は飛ぶけど、彼女たちクスリ慣れしているから、覚せい剤なども入りやすいんですよ。進学校の女子などが「これでがんばれる」「眠くならないよ」といわれて微量から入っていくらしい。
高木 こわいですね。学校の保健体育では、からだの学習はしないのですか。
中西 学校の現場はよく知りませんが、おそらく「保健体育」の保健がすっぽりぬけて、体育・運動が主眼となり、からだを育てる保健を教えてくれる教員はいるのかしら?
かえって昔のほうがからだのことを勉強していたみたいですね。
藤澤 小山内先生は、小学校で講話をされ、子どもたちに大好評だったと聞いたことがあります。先生は「きちんと話せば、子どもはわかる」といって、頭の固い大人より子どもに話すほうを喜びました。

生活の偏りを是正し、健康に導く

中西 ここに来るとき駅でトイレに入ったら、3人くらい並んでいたけれど「和式は空いていますよ」だって。膝が痛い、足首硬い、でしゃがめないという残念な状態。使う側にとって、和式トイレは清潔で気持ちいいのにね。
高木 昔は洋式なんてなかったから、日本人の足腰はいかに劣化したかということ。
中西 だから小山内先生は膝屈伸をやるように言われた。小山内体操プラス膝屈伸20回、これを習慣づけている人は、80過ぎでも和式OKです。
藤澤 人間の身体は全身の運動器を使って営むようにできている。ところが快適さを追求する現代生活では、そのからだがしくみどおりに使われず、歪み・偏りが生じる。 そこを動かして偏りを是正しようというのが小山内体操です。
トイレだって毎日立ったりしゃがんだりしていれば、足腰は鍛えられる。だからといって和式に戻れというのではなく、1日20回の膝屈伸を、毎日の生活に取り入れなさいということ。
高木 じつに合理的ですよね。
中西 「水かぶり」だってそう。皮膚は暑さ寒さにさらされて皮膚機能が働き、副腎皮質ホルモンが分泌して、からだを守ってくれるのに、今は小学校だって冷暖房完備だから、防衛機能が働くチャンスがない。だからてっとり早く「水かぶり」なんですよね。
藤澤 「朝食抜き」だってそう。先生は「朝起きてすぐ食べるのは、野生の生き物が目覚めたら枕元にエサが待っているようなもの。走り回ってようやくエサにありつけるはずなのに」と言っていた。生き物本来のあり方に戻って発想しなさいということ。
中西 小山内先生は、現代生活とからだのしくみの間に生じた矛盾を解決するために、必要なことを4つの項目にまとめてくださった。それが小山内式4原則だと思う。何も特別のものではないと、最近つくづく思うの。現代の生活はどんどん便利になっていくから、私たちは先生の後を継ぐだけでなく、健康をそこねる問題のあり様をよくよく観察し、方策をかんがえ、あれこれとやってみなければならない。
藤澤 これだけ医療費がかかっているということを、国民が認識して、なるべく医者にかからない、自分で健康管理するという自覚がないと、国がつぶれてしまう。お金だけではない、国民が弱ければ、国は強くなれない。それには予防医学しかないと考えて、先生はがんばってこられた。
中西 せっかく小山内先生がこれだけ健康になれる方法を編み出してくれたんだから。実際私たちはその技術を手にしたことで、とても喜ばれているので、そろそろ実践の場を設けようと考えている。
そこでは、ブチブチと切れた健康法ではない、全体的な健康法を追求し、情報まみれの日々の生活をも振り返らせる学習をしていきたい。
今女性4人が週1回来ていますが、気持ちのある人だけ受け入れようと思っている。
藤澤 それはいい。広めるには、そういう具体的な行動がないと。
高木 このサイトにも問い合わせがありますが、場がないので対応できない。中西さんが健康塾を開業してくだされば、どんなにか喜ばれることでしょう。
中西ヒロ子
保健師・助産師 1951(昭和26)年生まれ 昭和49年助産師となる。ベビーブームの渦中で年間1000件を超える分娩を取り扱う病院に5年間勤務。 昭和54年保健師学校に入学。卒業後保健師として神奈川・東京の自治体に勤務。平成4年東京都日の出町にて、町の健康づくり事業に小山内先生を招聘。町民の健康づくりとして小山内式4原則を学習・導入する。 平成23年退職。現在フリーな立場で健康づくりを指導する。
藤澤新作
1947年生まれ 日本軽金属(株)に入社し、苫小牧工場にて安全衛生を担当。そこで嘱託医小山内博に出会い、ともに従業員の健康づくりに励む 1986年退社し、同年クニミネ工業(株)入社。同社に小山内医師を引き込み、社員の健康づくりに貢献する 2012年退社。小山内医師が亡くなるまで親交が続いた。

(文責 高木亜由子)
2017年12月31日  

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『「水かぶり」でアレルギー知らず!』小山内博士の、生命をつよくする子育ての知恵