諸悪の根源「胎便」を出し切る!

「胎便」残留を疑う

ホッペの湿疹が 
なかなか消えてくれない。
小山内式では、これまで生まれたばかりの赤ちゃんに水をかけて副腎の強化策をとり、アレルギーや風邪ひきに強いからだづくりを目指してきました。
前回登場いただいた小川綾ママも、生まれてまもない赤ちゃんに水をかけて育て、病気知らずのからだづくりに成功しています。
ところが、同じ頃に坊や(大喜クン11カ月)を出産されたお友達の内藤真由美さん(35)の場合は、ちょっと様子が異なります。同じように生まれてすぐに水かけをしてきたにもかかわらず、生後2週間くらいから顔に湿疹ができ始め、半年以上たった今もおさまらないのです。
腕や胴体、足などはきれいで、湿疹は顔だけ。医師にはアトピーではないといわれていますが、痒がり、かきむしるとひどい状態になるので、クスリ(ステロイド)のお世話になることもしばしばです。
はて、これはどうしたことか。
そこで思い当たったのが、「胎便」の可能性です。
昨年の2015年4月31日に掲載した記事「しつこい湿疹は『胎便』が原因だった!?」で取り上げた、あの「胎便」です。
文中のママは、産後「胎便」を排出することの大切さを認識していなくて、そのタイミングを逸してしまい、母子ともいつまでも湿疹・アレルギーに苦しみました。
そう、あの「胎便」がワルさをしているのではないか。
そこで今回は、知らないと母子とも苦しむことになる、出産時における重要なテーマ「胎便」排出ついて、徹底的に検証します。

「胎便」を軽視する現代医療

「胎便」という言葉、妊婦さんでも初耳という方が多いのではないでしょうか。
内藤さんは、妊娠中の講習でも、出産前の病院でも、誰からも「胎便」という言葉を聞いたことがないといいます。
今や病院や産院でも、「胎便」の排出を重要視する考えはまれで、「胎便」そのものを知らない医療関係者も少なくないようです。
「胎便」とは、赤ちゃんがおなかの中で成長する間にため込んだ、羊水に含まれる不要な成分や、胆汁や腸液といった老廃物・毒素です。これらは有害なもので、出生時に赤ちゃんの体内から一掃する必要があります。
ひと昔前までは、「胎便」排出はたいへん重要な通過儀礼であって、お産の現場では「胎便」が出たかどうかを確認し、出切らなかった場合は、何日かかっても出し切る努力をしました。これを怠ると、後々まで湿疹や皮膚病に悩まされることになるからです。
「胎便」は、黒緑っぽく、タール状で、粘り気があって、臭いはしない。ドロッとして海苔の佃煮のような形状です。
はじめて「胎便」を見た妊婦さんは、びっくりします。小川さんは、初めての出産時にオムツに黒い便を見て仰天し、看護師さんに聞いたら、「心配ないですよ。生まれてすぐは黒い便が出て、ミルクを飲むようになると、黄色いウンチに変わる」と説明されたそうです。その程度の説明だったそうです。
今回は3回目のお産で、例の記事を読んでいたため、余裕を持って対応できたとのこと。その場を振り返ってみていただきましょう。

「胎便」は自然に排出される

3人目の子はスゴイ量が出た。1日に何回も、オムツを開けるたびに黒い便が出ていた。生まれて2日間くらい出て、そのあとしばらく出なかったので、これで出切ったかなあという感じがあった。
だいたい、2〜3日くらいで出切るらしいが、ダラダラ出る子もいるし、量も子どもによる。多い子は300グラムも出るそう。
その間母乳は、乳首をくわえさせたが出ない。
母乳が出ないからといって、「胎便」排出中に粉ミルクをあげたりすると、消化吸収が始まって、排出が妨げられてしまうという。
3日くらいたって、「胎便」が出切った頃に母乳(初乳)が出はじめた。
すごい。じつに巧妙にできていると思う。「胎便」排出中、母乳は出なくて、排出し切ったところで出始める。ということは、生まれてすぐに母乳が出ないのは、胎便排出を妨げないためで、自然の摂理というべきか。
赤ちゃんは、生まれて3日間くらいは何も食べないことになるが、3日分の栄養を背負って生まれてくるから心配ないらしい。
「胎便」がどっさり出て、何も食べないから、赤ちゃんは出生後体重が減ることになるが、異常ではない。「胎便」に無関心な病院では、この体重減を気にして、粉ミルクをあげてしまうことがあるという。
また、初乳の前に、乳児ビタミン欠乏性予防のためとして「ビタミンK2シロップ」を飲ませたりする。
「胎便」排出中の3日間は、食べ物を与えてはいけない。消化吸収が始まってしまい、排泄はストップしてしまうから・・・、そう聞いていたので、この3日間は、子どもから目を離さないように気をつけていた。

指示に従ったが・・・

では、初産の内藤さんはどう対応したか。
内藤さんも、「胎便」の記事を読んでいたので、知識はありました。
出産後「胎便」が出たかどうか、オムツを確認。黒い便が2〜3回確認できた。量はそれほど多くなかった。紙オムツが吸収してしまったので、どれくらい出たか定かではない。
ともかく「胎便」らしきものが出たので、ひと安心した。
病院側は「黒い便は胎便で、異常ではない。これから母乳を飲むと、黄色いウンチに移行する」と図表を見せて説明してくれた。量や、出切ったかどうかについて言及はなかった。
翌日には「ビタミンK2シロップ」をすすめられて飲んだ。これは事前に同意書を求められた。
5日目に新生児黄疸が出ているといわれ、カプセルに入れられて治療。
母乳が足りないといわれ、粉ミルクを与えた。
退院してから1週間ほどして、顔に湿疹が出はじめた。
皮膚科を受診。乳児にはよくできるといわれ、ステロイドを投与される。
塗るときれいになり、やめるとぶり返し、その繰り返し。そのうち突然アレルギー症状のなかでも危険なアナフィラキシー症状を発症して、救急病院へ。とうとう本物のアレルギーになってしまった。
食べ物も選ばなくてはならなくなったが、10カ月近くたった今、基本的に状態は変わらない。湿疹は顔だけ。からだは健康そのもの。
こうして経過をたどってみると、内藤さんの場合、やはり「胎便」が出切ってなかったことが原因と考えられます。顔の湿疹は胎毒の証か?
新生児黄疸がでたのも、ビルビリンという「胎便」に含まれる物質がみられたからで、「胎便排出」が不十分だったからでは。
内藤さんは、振り返ってみて「胎便」が出切ったかどうかまで、考えが及ばなかった。量が多いか少ないかも。産んだばかりでそんな余裕もなかったし、周りの助産師さんや医師からも「胎便」排出に関する注意は何もなかったといいます。
何の情報も与えられなかった内藤さんを非難することはできません。
それどころか、排出を妨げることになる「ビタミンK2シロップ」をすすめられたりしているのです。
それがのちにどんなトラブルを引き起こすことになるか。
病院はお産が無事にすめばそれで終わりだが、母子はのちのちまで湿疹やアレルギーに苦しむことになるのです。

野口整体に教えられる

内藤さんは、「胎便」の排出不十分が湿疹の原因であると判明して、治療の方針を「毒出し」と定めて、いろいろ情報収集しました。
そのなかで出会って、衝撃をうけたのが野口整体です。
創始者の野口晴哉氏は、独自の健康観を確立して、医学界にも大きな影響を及ぼした方。なかでも育児に関する知見は、他の追随を許さないものがあります。
著書『育児の本』(全生社刊)には、胎便について長年の観察にもとづいた所見が記されていますので、その部分を抜粋させていただきます。
 赤ちゃんが生まれますと間もなく、お腹から真っ黒い大便が出てきます。カニババ(注・胎便のこと)といいますが、この老廃物の掃除が全部すんでから、授乳すること。母乳の初乳には残っているものを全部出してしまう働きがあって、それから普通の乳になるのです。ですから初乳を与えた場合にはすっかり掃除されるけれども、初乳以外のもの、牛乳などをあたえますと、大便を固めてストップさせてしまいます。
・・・・赤ちゃんのカニババが出終わるのをまたずに食べ物を与えたような子どもには、湿疹が多くでたり、小便や大便が股についてただれたりします。そのように抵抗力が非常に弱くて、それが急速に拡がってくるというような、皮膚の過敏な傾向は、お腹の掃除が不完全だということによって多く現れてまいります。
・・・・(そういう子に)痢症活点(右肋骨の下、肝臓のあたり)に愉気(手を当てて気を集注する)すると、おくればせですが、カニババの追加が出てまいります。その色の変わった大便が出ると一緒に、皮膚病はスーッとなくなってしまいます。
・・・・(こうした経験から)赤ちゃんにはカニババが出終わるまで食べ物を与えないというように指導したら、湿疹になる子供が無くなり、さらにはハシカや水痘のような場合でも、非常に簡単に経過するようになりました。・・・・
長年にわたる整体指導から導き出された「胎便」に関する考察・対処法は、整体関係者以外にも広く受け入れられているようです。
内藤さんは、もっと早く出会っていればよかった、と悔やしがります。

妊婦に「胎便」の情報提供を!

内藤さんは一刻も早く息子のからだから「毒出し」をしたいと、いろいろ試みています。
同じ症状を抱えていたママ友からは、小児鍼灸をすすめられました。
年配女性の鍼灸師によると「胎便が出切っていないからですよ。今こういう赤ちゃんがとても多いの。昔は湿疹や皮膚病のある子は、マクリという漢方を飲ませて毒出しをした」とのこと。そこでもマクリを使うようですが、年齢的に遅すぎるとのことで、小児鍼とお灸でツボを刺激して、「毒出し」を促す施術をしてもらいました。しかし通いきれず、自分では子どもが動くのでうまく施術できず、断念。改善には至りませんでした。
先輩格のOさんとは、メールでやりとりをし、いくつか参考にされています。
・発芽玄米食、野菜ジュースの摂取
・水マグ(水酸化マグネシウム・からだにやさしい下剤 )の飲用など。
「毒出し」は目には見えないので、腸内環境をできるだけよくして、排泄を盛んにしようと考えてのことです。
整体はふたりとも実践。内藤さんは、抱っこしたときに野口氏の示した「痢症活点」に手を当てて、愉気をするように心がけています。

中身は元気いっぱいの大喜クン。しかしホッペの湿疹が消えるまでママの気は晴れない。
そして「水かぶり」は、ふたりとも生まれた時から欠かしません。
Oさんは、様ざまな「毒出し」が功を奏してか、1年余りで2子とも湿疹は完治。 食物アレルギーも改善しつつあります。内藤さんにとっては、希望の星であり、心強い味方でもあります。
内藤さんは今も病院に通い、ステロイドも手放せない状況ですが、Oさんの「ひどいときにはステロイドを使っても、長期間でなければ副作用を恐れなくてもよい。それに『水かぶり』をしているから、副腎はしっかり育って免疫力はついているはず」という言葉に勇気づけられています。
「毒出し」は一朝一夕にはできません。
内藤さんは、これから出産するママたちに同じ苦労をさせたくない。
胎便の知識をしっかり持って、適切に対応してもらいたい。そして、せめて母子手帳に「胎便」のことをきちんと記載してもらいたい、と考えています。
このたびの取材を通じて考えたこと。
今、乳児性湿疹が増えているおもな要因は、「胎便」排出が不十分であるため。
昔は自然分娩だったので、「胎便」は自然に排出された。周囲も昔からの知恵で、「胎便」排出を大切に見守った。
ところが今は「胎便」の意味を知る人が少なくなり、排出前に食べ物を与えたり、ビタミン剤を飲ませたり、人の手が加わっている。
その結果「胎便」はストップしてしまい、赤ちゃんの体内に吸収されて、胎毒となって湿疹や皮膚病に現れる・・・
というものですが、皆様はどのようにお考えですか。
ご意見、ご感想、同じような悩みを抱える方がいらしたら、ぜひ情報をお寄せください。
次回更新は9月の予定。
(文責 高木亜由子)
2016年6月30日  

●このコーナーに関するご意見、ご質問をお寄せください。
   小山内博の健康づくり全般に関するご意見も承ります。
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